国宝「紅白梅図屏風」。
江戸時代の絵師、尾形(おがた)光琳(こうりん)の最晩年期に制作された代表作です。二本の梅と中央に意匠化された水流。強く印象に残るこの作品は、どのような材料や技法を用いて水波を描いたかは謎に包まれていました。
本書では、この作品をMOA美術館と東京文化財研究所の共同研究で科学調査を行い、その結果が写真とともに紹介されています。絵の凹凸が分かるほど近くで撮影した画像や、肉眼では見ることのできないX線透過画像、蛍光X線分析から分かる金の検出量など、さまざまな角度から絵を見ることができます。遠くから絵を鑑賞するよりもずっと深く、どのように本作が描かれてきたのかを垣間見ることのできる貴重な資料です。
光琳は絵画作品だけではなく、弟乾山(けんざん)の陶器の絵付けや蒔絵のデザイン、小袖や団扇などの意匠を手がけたりと、制作活動は多岐にわたりました。琳派の基礎を作った俵屋(たわらや)宗達(そうたつ)の画風を継承・展開した光琳の画風は、のちに酒井(さかい)抱一(ほういつ)へと継承されていきます。
そんな琳派を代表する絵師たちを紹介する本も所蔵しているので、本書と合わせてぜひ探してみてください。