バラの画家として知られ、バラの絵といえば彼をおいて他に挙げられないほどの植物画家である、ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテ。ルドゥーテはバラやユリなどの植物を描いた、精密度の高い植物画を多く残しています。
本書、『バラ図譜』に描かれているのは、ナポレオン皇妃ジョゼフィーヌが居住していたマルメゾンの館の庭園、マルメゾン庭園に栽培されていたバラの数々。169枚ものバラの絵が、およそ原寸大と思われる大きさで掲載されています。興味深いのは、描かれているすべてのバラが現存するわけではないということ。その当時のバラを知る貴重な記録でもあります。
細密に描かれた植物画はボタニカルアートと呼ばれますが、ルドゥーテが描くバラは、花ひとつひとつが持つ、それぞれの特徴や魅力がそのままに描き出されています。いわゆる花瓶や果物も一緒に描かれているような静物画とは異なり、バラそのものの美しさ際立ち、見ているだけで引き込まれていきます。
NFDライブラリーでは、ボタニカル・アートの本も所蔵しています。『ボタニカル・アート 古代から現代までの花と人の文化史』では、ルドゥーテよりもさらに前の時代、2000年も昔の古代エジプトから、ルドゥーテを含め、現代までの植物画の変遷が見て取れます。ルドゥーテはもちろん、その他にも芸術性に富んだ植物画が多く描かれています。
『バラ図譜』も『ボタニカル・アート 古代から現代までの花と人の文化史』も、眺めるだけでも十分に楽しめますが、デザイン画を描く際に活用してみてはいかがでしょうか。