他に類を見ない個性的な作品を生み出したエミール・ガレ。アール・ヌーヴォーを代表するフランスのガラス工芸家です。透明で壊れやすいガラスのイメージを覆す、ダイナミックで立体的な作品が多く掲載された本書は、2016年に開催された美術展「エミール・ガレ」の図録です。
ガレの作品は草花や生き物をモチーフにしたもので溢れています。よく使われた蜻蛉のモチーフの他、花や植物もガラスや陶器、家具のモチーフとして多く取り入れられています。中でも目を引くのは、大輪のカトレアを溶着させた作品です。正面は美しく咲き誇っているものの、背面では萎れた姿になっており、生と死の表裏一体を表しているとのこと。生きている花が持つエネルギーを体現したかのような作品に、圧倒されるのではないでしょうか。本書では作品だけでなく、植物学者でもあったガレが残した作品の草案や素描も多く掲載されています。細密かつ写実性に富んだ絵は、まるでボタニカルアートのようで驚かされます。
ガレの生涯や時代背景などの解説もふんだんに盛り込まれ、今もなお多くの人を惹きつけているガレの作品を堪能できるおすすめの一冊です。(蔵書番号:0003012)