植物の葉っぱには、クロロフィル(葉緑素)という緑色の色素が含まれることは、前回紹介しました。それに対し、植物の花に含まれる色素は、主に3種類あり、フラボノイド、カロテノイド(カロチノイド)、ベタレインです。
フラボノイドの代表的な物質は、アントシアニンです。これは、バラ、アサガオ、ペチュニア、パンジー、シクラメン、サツキツツジなどの赤い花の色をだす色素です。また、ツユクサ、キキョウ、リンドウ、ペチュニアなどの青い花の色もアントシアニンによるものです。
カロテノイドは、赤色や橙色、黄色系の色をだす色素です。キクやタンポポ、ナノハナ、マリーゴールドなどの植物に、この色素が含まれています。ベタレインは、黄色から赤色までの色を出す色素で、オシロイバナ、マツバボタン、ケイトウ、ブーゲンビリア、サボテンなどの花の色を出します。
多くの植物は、これらの色素で花を美しく装います。その理由の一つは、「目立つ」ことです。花は、次の世代へ命をつなぐタネをつくります。そのために、花粉の移動をハチやチョウ、メジロなどに託します。ですから、虫や小鳥に「ここに、花が咲いているよ」と目立って、寄ってきてもらわなければならないのです。
植物がきれいな色素で花を美しく装う理由は、目立ちたいだけではありません。大切な理由がもう一つあります。それは紫外線対策です。紫外線は、植物であろうと人間であろうと、身体に当たると、「活性酸素」という物質を発生させます。活性酸素は、人間では、「成人病、老化、ガンの引き金になる」や、「シミ、シワ、白内障の原因になる」などといわれる有毒な物質なのです。
そのため、自然の中で、植物が紫外線に当たりながら生きていくには、活性酸素を消去しなければなりません。そこで、植物は、活性酸素を消し去る「抗酸化物質」とよばれる物質をつくります。代表的な抗酸化物質が、花びらを美しく装う色素なのです。植物は、抗酸化物質で、花を美しく装い、花の中で生まれる子どもを守るのです。
このため、太陽の光が強ければ強いほど、活性酸素の害を消すために多くの色素がつくられ、花の色は濃くなります。空気が澄んだ高い山には、紫外線が多く照りつけるので、高山植物の花には、美しくあざやかな色をしているものが多く存在します。
植物たちは、紫外線という有害なものが多ければ多いほど、逆境に抗って、身体を守るために色あざやかに美しく魅力的な装いになるのです。