今回は、「フラワーサイエンス」というタイトルのこのコーナーには、ふさわしくない植物の紹介です。なぜなら、花が咲くことがないからです。しかし、この植物の姿は、小型の青竹のような印象で、和風にも洋風にもマッチするので、生け花やフラワーデザインに、よく用いられます。
青竹に似ているので、「タケやササのように、60年や120年ごとにしか、花が咲かないのか」と思う人もいますが、この植物は、花を咲かさないシダ植物の仲間です。そのため、何百年、何千年を経ても、花を咲かすことはありません。
トクサはトクサ科トクサ族の植物で、原産地は、日本を含む北半球の温帯地方です。この植物の学名は、「エクイセツム ヒエマレ(Equisetum hyemale)」で、「エクイセツム」は、トクサ属であることを示し、ラテン語で「エクイ」は「馬」を、「セツム」は「毛」を意味しています。「ヒエマレ」は「冬の」を意味し、トクサは冬でも枯れずに緑であることにちなむと思われます。
この植物は、土の中を横に伸びる地下茎から、地上へ茎を出します。その茎は、太さ約5ミリメートルで、枝がなく、直立して、中空です。茎には、3~7センチメートルごとに節があり、節ごとにギザギザの小さな葉っぱがあります。茎は、高さ約1メートルまで伸びます。
茎の表面には、ケイ酸という物質が多く含まれ、ザラザラです。そのため、乾燥させて、研磨材として用いられます。トクサという名前は、この性質にちなみ、砥ぐ草(とぐくさ)から「砥草」に転じました。また、この植物の別名は「歯磨草」であり、「硬い茎が歯を磨くのに使える」という意味と思われます。漢字名で「砥草」と書かれていると読みやすいですが、「木賊」と書かれることがあり、読みにくい植物名の一つです。これは、この植物が、生薬として用いられるときの名前に由来します。
トクサには仲間として、同じトクサ科トクサ属のスギナがあります。トクサの属名である「エクイセツム」が「馬の毛」を意味しているのは、スギナの姿にちなむと思えば納得できます。スギナは、胞子をつくるために、先端に胞子嚢を穂のようにもつ土筆(ツクシ)をつくりますが、トクサにも、茎の先端にツクシのような胞子嚢を穂状にもつものができ、胞子がつくられます。(text:TANAKA Osamu)
花の形体や形態、キャラクターなどにより、作品のイメージに合った使い方をします。
トクサは、まっすぐに伸びた緑色の茎で横に広がることがない形状から、装飾的なデザインに使用されることが多く、
フラワーデザイナー資格検定試験の1テーマである「並行―装飾的」では、フトイと同様に多用されています。
フラワーデザインにおける3つの形体~個性的な形の葉「フォーム」、1枝にたくさんの小さな葉がついたもの「フィラー」、線的な葉「ライン」~のうち、「ライン」に属しており、同じ仲間にトクサやニューサイラン、ベアグラス、リリーグラスなどがあります。
(text:NFD)