アール・ヌーヴォーとアール・デコ 甦る黄金時代
千足伸行/監修 小学館/刊
485ページ

 本書は、タイトルにもある通り、アール・ヌーヴォー時代の流れからアール・デコに至るまで、建築、絵画、花器、陶器など、アール・ヌーヴォー、アール・デコを冠した作品が大小さまざまに掲載されています。また、写真と合わせて読みごたえのある論文やコラムが随所にちりばめられていることも魅力のひとつです。そのなかで、本誌のFashion Worldの執筆者である深井晃子氏も、第三章「行動する女たち」の「時代のミューズたち」に論文を寄せています。
本の表紙はアール・ヌーヴォーを代表するフランスの工芸家、エミール・ガレ。ケースから本を取り出すと、ガレ独特の華やかな花器が目を引きます。アール・ヌーヴォーの時代に続くのはアール・デコ。1910年代から1930年代頃に流行したアール・デコは、ヨーロッパだけではなくアメリカでも人気が広がりました。
 アール・デコのスタイルの特徴はジオメトリック。やわらかな曲線が多く使われたアール・ヌーヴォーとは違い、幾何学様式であり曲線を使ったデザインもいたってシンプルです。本書に掲載されているアール・ヌーヴォー建築とアール・デコ建築を見比べれば、それぞれの特徴がよく見えてくるでしょう。
 本の終わりには人物事典や、アール・ヌーヴォー、アール・デコ、それぞれの時代の年表が各国または各地域ごとに表記され、知識を深める上でも役立ちます。さらに、今回紹介したもう一冊の図書『アール・ヌーヴォー』も関連文献として掲載されており、2冊を手にしてアール・ヌーヴォーとアール・デコの芸術に浸ってみてはいかがでしょうか。

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