マトリカリア(ナツシロギク)
この植物はキク科で、南ヨーロッパから西南アジアにかけての地域が原産地です。「マトリカリア」という名称は、この植物が以前に、「マトリカリア属」に分類されていた名残です。現在、学名は「タナセツム パルセニウム(Tanacetum parthenium)」であり、タナセツム属(ヨモギギク属)とされます。「パルセニウム」は、「乙女」や「処女」を意味するギリシャ語の「パルセノス」にちなみます。日本には、明治時代の初期に渡来したとされ、「ナツシロギク(夏白菊)」と命名されています。
園芸植物としては、マトリカリアとよばれるのに対し、薬用植物としては、英語名の「フィーバーフュー」という名称が用いられる傾向があります。フィーバーフューは、「熱を下げる」や「解熱剤」の意味をもつ、ラテン語の「フィブリフューガ」に由来します。薬用植物としての効果については、古くからいろいろ伝えられていますが、現在も研究が積極的に進められています。
和名の「ナツシロギク」は、夏に白いキクのような花を咲かせることに由来します。この花は、キク科の特徴である、多くの花が集まって一つの花に見える「頭状花」です。頭状花を構成する花は、2種類に分けられます。
一つは、花の中央部に集まっている、筒や管のような形をしている「筒状花」、あるいは、「管状花」とよばれる花です。もう一つは、筒状花のまわりに並ぶ花びらのように見える白色の花です。これは、舌のような形をしているので、「舌状花」とよばれます。舌状花がハチやチョウを誘い込む役割をし、筒状花がタネをつくる役割を担っています。
園芸品種には、舌状花が、一重のものだけでなく、八重になるものや、舌状花のないものなど、いろいろな種類があります。
よく似ている植物は、カミツレ、カミルレ、カモミレなどとよばれる、「ジャーマン・カモミール」です。これは現在もマトリカリア属の植物であるため、「マトリカリア」とよばれる植物の中に、ジャーマン・カモミールが含まれることがあります。(text:TANAKA Osamu)
花の形体や形態、キャラクターなどにより、作品のイメージに合った使い方をします。
マトリカリアは、個々の花が小さく、1枝または1本の茎にたくさんの花が付いているので、メインの花を引き立てつつ、花と花の空間を軽やかに埋めて全体の調和をとる大切な役目をします。
資格検定試験では、野に咲く花のように自然で可憐な様子から、わずかな主張の花として、級やテーマを問わず花束やブーケやアレンジメントで幅広く使われます。
特に、一重咲きで白い花をつける品種シングル・ベグモは、小さな花がたくさん咲くので涼しげでかわいらしく、どの花とも合わせやすいことから、よく利用されています。(text:NFD)